中性子散乱は、物質のミクロな構造とダイナミクスを直接的に観測するプローブとして、物性科学の幅広い分野で利用されている。2011年3月の東日本大震災以後、研究用原子炉JRR3の運転は停止しているが、再稼働後の利用再開に備えて、物性研とJAEAでは装置、安全制度の整備を進めてきた。 最近JRR3の新規制基準への適合性の目途がたち、2017年度末に運転再開の見通しであることが示された。そこで、運転再開後に最大限の科学的成果が得られることを目的として、JRR3分光器群が切り開くサイエンスを議論する場としてISSPワークショップを開催する。 ワークショップでは、装置からサイエンスへ、サイエンスから装置への双方向での議論を行う。7年間のJRR3停止期間中に、J-PARC/MLFの本格稼働、日本原子力機構の組織変更、大学における複数の研究室とセンターの体制更新など、中性子科学を取り巻く環境は大きく変化してきた。この状況を鑑み本ワークショップでは、時代の流れに適合したJRR3とJ-PARCの相補利用形態、大学共同利用における分光器の運営方法のあり方、さらには他の量子ビーム(放射光、ミュオン)との関係性についても議論する。

プログラム

10月7日
13:00 施設長挨拶 柴山充弘
セッション1 装置の高度化、装置担当者からの研究提案 座長 藤田
13:05 益田隆嗣 東大物性研 「物性研三軸分光器の今後の方向性」
13:30 佐藤卓 東北大 「原子炉中性子源における非弾性散乱研究の最近の展開」
13:55 金子耕士 JAEA 「原子力機構三軸分光器群の展望と試料環境」
セッション2 利用者からの装置に対する研究提案(1) 
14:20 有馬孝尚 東大新領域 「偏極非弾性散乱の意義:電気マグノンを例に」
14:50 木村健太 大阪大 「特異な結晶構造を持つ磁性体の開拓と新奇量子磁性・電気磁気特性の探索」

休憩 15:15−15:25

セッション2 利用者からの装置に対する研究提案(2) 座長 益田
15:25 李哲虎 産総研 「鉄系超伝導体のスピン揺動」
15:45 山浦 淳一 東工大 「X線,中性子,ミュオンを協奏的に利用した物性研究-鉄系超伝導体を中心に」
16:05 目時直人 JAEA 「磁性・強相関電子系分野における四軸自由度の導入」
16:20 安井幸夫 明治大 「パイロクロア酸化物の磁気ダイナミクス」
16:40 佐藤正俊 名古屋大 「三号炉での研究進展に対する期待」

休憩 17:05−17:20

セッション3 全体討議 座長 吉沢
17:20 セッション1、2の講演・議論に関する全体討議
コメント 遠藤康夫

懇親会 18:00−


10月8日
セッション4 他施設、他の量子ビーム、計算物質科学との関係 座長 佐藤卓
9:00  梶本亮一 J-PARC 「パルス中性子源と定常中性子源の相補利用とその現状」
9:20  石井賢司 SPring8 「放射光共鳴非弾性X線散乱によるスピン・電荷励起」
9:40  和達大樹 東大物性研 「放射光共鳴軟X線散乱で見た遷移金属酸化物の新しい磁気秩序」
10:00 加藤岳生 東大物性研 「磁性体・強相関電子系の数値計算アプリケーションの現状」
10:20 髭本亘 JAEA 「ミュオン実験から見た中性子との相補性」
10:40 門野良典 KEK 「中性子散乱研究への期待―マルチプローブ研究の視点から」
11:00 藤田全基 東北大 「中性子物性研究新時代へ」

休憩 11:20−11:35

セッション5 パネルディスカッション 司会 武田
11:35 JRR3での研究推進に向けた将来計画策定について 

セッション6 総括
12:05 山田和芳
12:15 金谷利治
12:25 おわりに

懇親会:10月7日18:00から 物性研本館6階ラウンジ 会費3000円