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超伝導磁石を用いたテスト実験


2014年12月11日から16日にかけて、超伝導磁石を用いたテスト実験をHRC分光器にて行いました。ラディアルコリメータと呼ばれるオプションを用いることで、高品質なデータの収集に成功しました。 
 
中性子実験用の超伝導磁石では、中性子光路を確保するために、上下にスプリットした超伝導磁石を配置し、光路内への漏洩磁場を利用して試料に磁場を印加します。二つのマグネットの間には大変大きな力がかかるため、アルミ製の補強材で二つのマグネットの間を支えます。この補強材は、中性子光路内にも設置されるため、中性子実験を行うと補強材からの大きなバックグラウンド散乱が生じてしまいます。これを軽減するために、Fig.1に示されるようなラディアルコリメータを利用します。この装置を用いると、試料から散乱される中性子を優先的に取り出すことができるので、比較的高品質な実験データを得ることができます。 
 
 
Fig. 1 ラディアルコリメータ
 
まず初めに、超伝導磁石に試料を入れずにテスト実験を行いました。その時のデータがFig. 2です。ラディアルコリメータを装着していますが、この程度のバックグラウンドが出てくることが分かります。
 
 
Fig. 2 超伝導磁石からのバックグラウンドを測定したデータ
 
次に、Fig. 3に2次元反強磁性体の試料を超伝導マグネットに入れて測定した中性子スペクトルを示します。Fig. 4は、同じ試料を通常の冷凍機に入れて測定した中性子スペクトルです。Fig.3を見ると、マグネットのデータは、低エネルギーにバックグラウンドが観測されていますが、Fig,4と比較すると、おおよその中性子スペクトルは観測されていることが分かります。Fig.5は、Fig.3のデータからFig.2のバックグラウンドのデータを差し引いたものです。Fig.4のデータをかなりよく再現しています。
このように、超伝導磁石とラディアルコリメータを用い、さらにバックグラウンドデータの差し引きを行うことにより、高品質なデータを得ることができました。
テストの詳細は
マグネットweb用.pdf
からダウンロード可能です。私たちは、磁場を印加した状態でのテスト実験も行い、同様に高品質なデータが得られることを確認しました。
 
 
Fig. 3 超伝導磁石中に試料入れた場合の実験データ
 
 
Fig. 4 通常の冷凍機に資料を入れて測定した実験データ
 
 
Fig. 5 バックグラウンドを差し引いた後の実験データ