柏キャンパスで大型単結晶の軸立てができる?!
中性子非弾性散乱実験では、試料ボリュームを稼ぐためにいくつかの試料を並べて実験することがありますが、中性子ビームを使った結晶の軸立ては、貴重なマシンタイムを消費することになります。 そこで通常は、加速電圧40kV程度のX線による背面ラウエ撮影で結晶を並べるわけですが、結晶内部までX線は侵入しないので、中性子ビームを当ててから単結晶の質が問題になることがあります。 この問題を解決するために、益田研究室では、高エネルギーX線透過ラウエシステムを立ち上げ、柏キャンパスで、中性子実験試料の結晶チェックや軸立てが簡単にできるようになりました。これにより中性子マシンタイムを有効に使うことができます。また、コバルトなどを含む試料の場合、中性子ビームを用いた軸立てを行ってしまうと、放射化により数年間は外に持ち出せなくなってしまいますが、本システムではX線ラウエによる軸立てなので、放射化の心配はありません。海外施設実験用の試料の軸立てにはもってこいの装置です。 |
左図)大型単結晶ラウエ装置 X線源 YXLON MG452 最大電圧=450 kV 最大電流=10 mA 白色X線ビームのピークエネルギー=310 keV (linear absorption coefficient 0.099 cm-1 for Cu, 0.42 cm-1 for Pb) CCDカメラ high-speed CCD camera イメージングサイズ=10cm×10cm (1024×1024 pixels) 試料ステージ X, Z, ω, RX, RYをPC(labview)制御 |
単結晶組み立て例 @ | |
試料 | 入射のラウエパターン |
TiO2 | |
単結晶組み立て例 A | |
試料 | 入射のラウエパターン |
Ba2CoGe2O7 | |
結晶軸を完全に合わせることで、(A)に示すようなきれいなラウエパターンが測定できますが、 チルトが2度ずれると(B)に示すような明るいリングが現れます。 このリングの大きさは、結晶のずれに比例しますので、このリングを消すように単結晶を回転させることで容易に軸立て出来ます(C)。 |
(A) きれいなラウエパターン |
(B) よりチルトが2度ずれたラウエパターン |
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(C) よりチルトが2度、ωが2度ずれたラウエパターン |
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高エネルギーラウエ装置を用いて3本並べたBa2CoGe2O7単結晶試料と中性子回折実験で測定したQ=(2,0,0)におけるロッキングカーブ。 オメガ、チルトともに0.5度以下の精度で軸立てできます。
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