本文へスキップ

最近の研究成果よりnew informetion

マルチフェロイック物質Ba2CoGe2O7における磁気モーメントの連続的電場制御

益田研究室
助教 左右田稔

@研究背景
  横滑り螺旋磁気構造などの特異な磁気構造をもつ相への転移と同時に、強誘電相への転移を示すマルチフェロイック物質が注目されています。 マルチフェロイック物質に見られる電場による磁気秩序の変化、あるいはその逆に磁場によって電気分極が変化するといった電気磁気効果は, 微小消費電力の磁気記憶装置への応用も考えられ,近年精力的な研究が行われています。 これまでの研究により,多くのマルチフェロイック物質はスパイラル磁気構造などの特異な磁気構造を起源とする強誘電性を持つ事が明らかになっています。 この方向での物質開発が進められている一方で、新たな誘電性と磁性の関係を探索することも重要です。 我々は、collinear磁気構造をもつマルチフェロイック物質Ba2CoGe2O7に注目した研究を行っています。
二次元反強磁性体Ba2CoGe2O7は、磁場下においてab面内のcollinear反強磁性秩序とc軸方向の自発的誘電分極が同時に出現するマルチフェロイック物質です。 この系では、磁性を担うCoO4四面体に反転中心が存在しないことから、Coサイトのスピン四極子は電気分極と等価となります。 このため、当該物質では誘電的性質をスピン・ハミルトニアンの枠組みの中で解析することが可能です。 以前我々は、当該物質の中性子散乱実験を行い、~0.1 meV程度の磁気異方性ギャップが観測されることを報告しました。 この異方性ギャップは、2次の項までを考慮した通常のスピン・ハミルトニアンでは説明されず、 スピン四極子OXY=cos(2κ)(SxSy+SySx)-sin(2κ)((Sx)2-(Sy)2)間の相互作用によって説明されます。

A研究内容
  スピン四極子相互作用の大きさは、電場による磁気異方性制御の容易さと関連しており、 新規電気磁気効果の指針となるパラメーターとなります。 我々は、スピン四極子相互作用を通した電気磁気効果を明らかにするため、電場中偏極中性子実験をスイスにあるPSI/SINQの3軸分光器TASPを用いて行いました。 中性子回折実験を行った結果、電場印加によって磁気モーメントがc面内で回転することを発見しました。 この変化は、図1に示すように基底状態であるS//<100>の反強誘電状態からS//<110>の強誘電状態に移り変わっていることを意味しています。 磁気反射強度から見積もられる磁気モーメントの回転角度を図2に示します。電場の大きさが増加するのに伴って磁気モーメントの回転角が連続的に増加しています。 従来のマルチフェロイック物質における電気磁気効果とは異なる連続的な磁気モーメントの電場制御に成功しました。 さらに、図2に示す実線はスピン四極子相互作用のハミルトニアンから見積もられる計算値であり、電気磁気効果を定量的に解析することにも成功しました。 今回の研究結果は、電気磁気効果の研究分野をより発展させると期待されます。

記載論文
Minoru Soda, Shohei Hayashida, Bertrand Roessli, Martin Mansson, Jonathan S. White, Masashige Matsumoto, Ryousuke Shiina, and Takatsugu Masuda, "Continuous control of local magnetic moment by applied electric field in multiferroics Ba2CoGe2O7" Physical Review B 94, 094418.





問い合わせ

〒277-8581
千葉県柏市柏の葉5-1-5

TEL 04-7136-3415